利酒師 毛馬 克紀の日本酒だより 2020年3月号

毛馬 克紀 プロフィール

料飲部マネージャー
毛馬 克紀 (Katsunori Kema)

大阪市内のレストランやホテルなどで経験を積む。シニアソムリエを始め、ジュニア・バーテンダー、焼酎利酒師など様々な資格を持ちレストランサービスにおいて精通しているスキルを持つ。2014年に大阪マリオット都ホテル入社。2015年に日本酒 利酒師を取得。


取得資格:シニア ソムリエ / 草月流 師範 / 表千家 茶通箱 / ジュニア バーテンダー / 和食検定 実務レベル2級 / 国家検定資格 料飲サービス士 1級 / テーブルマナー講師 西洋料理 / 日本料理食卓作法講師 /調理師 / 焼酎利酒師 / J.S.A. SAKE DIPLOMA / 酒匠

2020/3/1号

日本酒だよりは4周年を迎えることが出来ました。
2月に福岡と佐賀の酒蔵を見学してきましたので、
今回は、レポートをお届けいたします。

三井の寿 春 純米吟醸 QuadriFoglio(クアドリフォリオ)
130ml ¥1,300

“三井の寿”の酒蔵は久留米市の東側、筑後川に注ぐ、超軟水の清流で知られる小石原川の土手沿いにあります。訪問した日は、観測史上最も遅い初雪が降り、大変寒い一日でした。今回の酒蔵見学は、取引先の乾酒店からのご紹介がで運良く実現ができ、良い機会ですので、レストラン「ZK」の若手スタッフ2名と一緒に伺いました。博多駅からはJRと趣のある単線を乗り継ぎ2時間弱で到着しました。

先ずは、4代目蔵元の井上 宰継氏にお礼を申し上げ、酒造りに関してのお話をうかがうことが出来ました。“三井の寿”の特徴は、歴史のある純米酒専門の酒蔵であること。38年も前に先代の蔵元がフランス・ボルドーにワイン醸造を視察した際、日本の酒造りの現状に疑問を持ち、それまで99%普通酒を造っていた蔵を99%純米酒の蔵に変えました。残り1%は鑑評会に出品する大吟醸のみです。当時としてはとても斬新な試みで、“十四代”の高木社長も学びにいらっしゃるほどの日本酒界の先駆者であったようです。

現蔵元の井上氏は、就職先から蔵に戻ってきた時、石川県“菊姫”の農口杜氏の下で修行された能登杜氏から指導を受け、酒造りを学び、後に杜氏システムを廃止して、蔵の製造部として若い蔵人たちと試行錯誤しながら造りを担当されています。現在、鑑評会での金賞受賞回数は福岡80蔵の中で一位の優秀蔵ですが、井上氏曰く、「金賞を目指すF1クラスの大吟醸も造りますが、日常乗りの乗用車(純米吟醸)や気軽な軽四(純米酒)も造ります。‘ローカリティ’、‘クオリティ’、‘オリジナリティ’をモットーに酒米や酵母、造りを変えて色々なタイプの酒を造っているところが三井の寿の特徴かな」と仰っていました。とにかく若い方や日本酒に良いイメージを持っていない方々に気軽に手に取って美味しく飲んでいただければ、という思いで日々酒造りに励んでいらっしゃいます。


この季節にぴったりの可愛らしい四葉のクローバーがラベルに採用された“QuadriFoglio”(クアドリフォリオ)です。「クアドリフォリオ」とは、イタリア語で幸運の四つ葉のクローバーを意味します。井上氏は大のイタリア好き。普段日本酒を飲まない方にも手軽に手に取っていただきたい、という思いからイタリア語とイラストだけの斬新なラベルを考案されました。春の白詰草の花畑をイメージして造られたこのお酒はうすにごりの香り高い純米吟醸です。

酢橘などの柑橘系の爽やかさや原料由来の酒粕の香りがあり、優しいテクスチャーで軽くて柔らかい酸が心地よい印象。程よい甘みと酸味のバランスが春らしい軽やかなお酒です。食事スタートのオードブルや日本料理の軽い煮物によく合います。

よく合うメニュー

■COOKA 「洋食&グリル ブッフェ」より
“白身魚と野菜のクラッシクテリーヌ”


■ZK
“金目鯛縮緬キャベツ包み
雲丹香るクリームソース”
(和食コース「令彩 」
  3月のメニューより焼き物)
“真鯛の昆布〆 胡瓜とオクラの“だし”
数の子のマリネ”
(洋食コース「Seasonal」
  3月のメニューよりオードブル)
など

蔵元名

株式会社みいの寿
(福岡県 三井郡大刀洗町)

原料米

吟のさと

精米歩合

60%

日本酒度

+3

酸度

1.5

天吹 ぴんくれでぃ
130ml ¥1,200

“三井の寿”を後にした我々一行は、昼食休憩で久留米に立ち寄って、名物とんこつラーメンをいただき、バスで30分ほど西に移動して天吹酒造に到着。会長の木下 武文氏に出迎えていただき、早速、蔵内へと案内していただきました。1688年創業で332年の歴史ある酒蔵らしく、受付がある母屋を抜けると、広い敷地に樹齢300年の欅の大木があり、更に奥に築100年を超える仕込み蔵に入っていきます。広い蔵内にずらっと並ぶタンクを前に天吹の酒造りについて会長が懇切丁寧に説明をしてくださいました。

母屋に戻り、11代目蔵元の木下 壮太郎氏から、テイスティングを交えながら“天吹”の味わいについて教えていただきました。先ず特徴として挙げられるのが、花酵母を使用すること。約20年も前に東京農大の教授から面白い酵母が見つかったから見においでと連絡をいただいたのが発端で、花酵母由来の華やかな吟醸香に魅せられ今日に至っているそうです。また、酒造好適米を主力に使用しているが、幅広い方々に日本酒を味わっていただきたいとの思いから、低価格に抑えられる飯米も試験的に採用しています。造りのバリエーションも日本酒通の方が好まれるしっかりとした味の生酛から、ビギナー又は日本酒が苦手な方に向けて甘いトロピカルな香りのバナナ酵母の日本酒まで幅広い商品のラインナップがあることも“天吹”の特徴です。この日は7種類を試飲させていただきましたが、どれも美味しく飲ませていただきました。テイスティング用のグラスが大振りで蔵元が注いでくださるのですが、注ぐ量がそれぞれ結構な分量でしたので帰りには、かなり酔いが回っていました。


天吹酒造からは、ピンク色の日本酒を紹介します。その名も“ぴんくれでぃ”。何故ピンク色になるかと説明しますと、原料米に赤ワインと同じ成分のポリフェノールを含む古代米の「紫黒米(しこくまい)」を使用しており、佐賀県の酒造好適米「佐賀の華」と混合して醸すことにより、美しいピンク色に仕上がります。蔵自慢の花酵母は「いちご酵母」と「月下美人酵母」をブレンドし華やかな香りを造り出します。

やや青みがかったローズ色。道明寺粉や桜餅を連想する少し香ばしい甘い香りや、酵母由来のブルベリーやラズベリーの香りもあります。滑らかなテクスチャーで短い余韻の後に来る軽い苦みが食事との相性の良さを思わすフルーティーな味わいです。煮物や温物などのソフトな印象を与える料理や、トマトベースのパスタや、お肉料理にもよく合います。

よく合うメニュー

■COOKA 「洋食&グリル ブッフェ」より
“有頭エビフライ
タクアン入り自家製タルタルソース”


■ZK
“近江牛と筍の若狭焼き”
(和食コース「蒼天」
  3月のメニューより焼き物)
“フランス産鴨胸肉のロースト
フォアグラのテリーヌ添え ”
(洋食コース「Twilight」
  3月のメニューよりメイン料理)
など

蔵元名

天吹酒造合資会社
(佐賀県 三養基郡みやき町)

原料米

佐賀の華・古代米(紫黒米)

日本酒度

+3

酸度

1.7

最後に・・・
酒造りのお忙しい時期に蔵を訪れたにもかかわらず、丁寧にお酒について語っていただいた株式会社みいの寿蔵元の井上 宰継氏、ならびに天吹酒造合資会社の木下会長と蔵元の木下 壮太郎氏にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

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