利酒師 毛馬の日本酒だより

毛馬 克紀 プロフィール

57階レストラン「ZK」マネージャー
毛馬 克紀 (Katsunori Kema)

大阪市内のレストランやホテルなどで経験を積む。シニアソムリエを始め、ジュニア・バーテンダー、焼酎利酒師など様々な資格を持ちレストランサービスにおいて精通しているスキルを持つ。2014年に大阪マリオット都ホテル入社。2015年に日本酒 利酒師を取得。


取得資格:シニア ソムリエ / 草月流 師範 / 表千家 茶通箱 / ジュニア バーテンダー / 和食検定 実務レベル2級 / 国家検定資格 料飲サービス士 1級 / テーブルマナー講師 西洋料理 / 日本料理食卓作法講師 /調理師 / 焼酎利酒師 / J.S.A. SAKE DIPLOMA / 酒匠

2018/3/1号

今回は、念願の“ちえびじん”酒蔵見学の模様をレポートいたします。

中野酒造

“ちえびじん”を醸す酒蔵、中野酒造は大分県杵築市にあります。実は私は、九州初体験でして、もちろん大分へも初上陸。少し緊張しながら国内線のプロペラ機に乗り込みました。大分空港から約20分ほど車を走らせると国東半島の南端部に位置する城下町杵築市の西側に蔵があり、映画やドラマの舞台になるほどの江戸時代の風情が今なお残る町並みがあります。
中野酒造は1874年(明治7年)に創業され、現在6代目蔵元であり代表取締役社長の中野 淳之氏が後を継いでいます。銘柄の“ちえびじん”は、現蔵元が8年前に蔵入りした際に、新たにスタートさせたブランドです。初代の奥様の名前から命名し、140年続いた“智恵美人”を引き継ぎ「平仮名」に換えたもの。そこには過去を大事にし、今あるものを大事にして、未来に向かって新しいものにチャレンジしていこうという想いが込められています。

酒蔵を訪ねて

“ちえびじん”で一番大切にしているものは水です。地下200メートルから湧き出る六郷満山の御霊水を仕込み水として使用し、その味わいはとても柔らかく、食のオリンピックともいわれる世界的コンクール「モンドセレクション」において3年連続最高金賞を受賞するほどの天然水です。しかも3年連続最高金賞を受賞する事で「国際最高品質賞」の栄誉を受けた天然水です。

また、最初は気づかなかったのですが、蔵内部の至るところにスピーカーが設置され、クラシック音楽が流れていました。日本酒は生きていて、その日本酒を造る生きている酵母や麹菌たちに気持ちよく働いてもらおうという考えです。

では、蔵見学のスタートです。
目の前に蒸留器が現れました。中野酒造では寒造りを行っていて、日本酒造りが一段落した5月ごろから良質の粕取り焼酎を製造しています。また、近隣の名産品である紅茶や南高梅を使用したリキュールも造っていて“ちえびじん 紅茶梅酒”はヒット商品だそうです。

洗米、蒸きょう、放冷と工程順に案内して頂き、製麹室の中も見せていただきました。こちらも最近設置したばかりの新しい部屋で、とても清潔に整頓されていました。上にかけてあるピンク色の毛布ですが、こちらは中野社長の好きなカラーで仕事にモチベーションが上がる色だそうです。そういえばラベルのカラーリングもピングが多いです。そして特に目を引いたのが、麹米の保存専用冷凍室の存在です。私も初めて見る光景ですが、とても効率の良い作業だそうです。

中野酒造は、少数精鋭4人のチームで一年を通して作業を行っており、仕込み作業の少ない9月ごろに集中して製麹を行い、冷凍室で保存します。気温が下がり、最盛期には仕込みに集中し、造りが落ち着いた頃には、製麹と仕込みを調整して大吟醸造りに集中するといった工程を取り入れています。そしてこの工程は、忙しい時期は皆で仕事を分担し、皆でお酒を造り、皆でお酒を売りに行き、次は何にチャレンジするかを考えるという中野社長の“ちえびじん”のブランディングを構築する上での考えに繋がっています。

次に大きな冷蔵室の中に入っている自動圧搾機(通称ヤブタ)を見せていただきました。ちなみに次の設備投資の機会にはこのヤブタをピンク色に塗り替える計画だそうです。中野社長がグラスを片手に搾りたてが入ったタンクに近付き、一杯汲んでくれました。本当にやさしい口当たりで、生き生きとしたフレッシュな酸を感じられ、大変おいしかったです。まさに酒蔵見学の醍醐味です。

中野社長の思い

15年前に大学を卒業して、大阪の飲料卸会社に就職。焼酎ブームの中、日本酒の売り上げが落ち込み、日本酒の文化が消える危機感を感じながらワインを売っていたそうです。そんなある時、“十四代”や“田酒”のような美味しい日本酒に出会い、米の違いや季節、手法といった日本酒ならではの造りを提案することで、焼酎にはない個性を生み出せるのでは、と思い蔵に戻ったそうです。中野酒造の個性である「水がやわらかい」を生かし、蔵のコンセプトを「やさしい甘みときれいな酸」に置き、食事とのマリアージュを前提とした食中酒を醸しています。また、「地元の人達の幸せも考えた蔵でなくてはならない」という考えから米は地元米にこだわっています。大分は焼酎の国、というイメージが強いですが、もともとは日本酒造りがメインでした。蔵自体は減っていますが、中野社長は、「良いものを造って大分から日本酒業界全体を変えたい」という強い気持ちで造られています。
まだ8年目の造りですが、これから色んなことにチャレンジして大分といえば“ちえびじん”、九州といえば“ちえびじん”と言われるようになるのが目標だそうです。

最後に・・・

中野酒造の仕込み水のようにとても優しくて柔らかい印象を与える中野社長でした。喋りだしたら止まらないくらい、日本酒造りに掛ける想いを情熱をもって語りだすとてもアグレッシブな酒造家です。今回、中野社長にお会いでき、“ちえびじん”の美味しさの理由を知ることができました。中野酒造の持つ柔らかい湧水と、蔵人や地元の方を含め、皆で“ちえびじん”を愛し、支え合うところから生まれるブランド力だと感じました。
酒造りの最中、お忙しい時に時間を割いていただき、熱心に酒造りについて語っていただいた中野社長にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

ちえびじん 純米酒 ひとめぼれ
130ml 1,200円

穏やかで僅かに和三盆を思わすやさしい甘い香り。口当たりは柔らかくてなめらか。飲み口は生き生きとした酸とはっきりと伝わる米の甘味とのバランスが良い。余韻と共に心地よい苦味が感じられ、食事と共に合わせやすい。全体的に軽やかで、きれいな水で仕込まれていると感じられるクリアな味わい。日本酒が苦手な方にもお勧めしやすいお酒です。

よく合うメニュー

“焼き桜鯛の煮びたし霙掛け”
(3月の「旬彩」
和食のコースより蓋物)
“豚三枚肉の赤ワイン煮
じゃが芋ピューレ添え”
(3月の「絶景」
和食のコースより留め肴)
“桜鯛とグリーンアスパラガスの
アクアパッツァ”
(洋食コース「Specialite」
 3月のメニューより魚料理)
など

蔵元名

有限会社中野酒造(大分県 杵築市)

原料米

山田錦・ひとめぼれ

精米歩合

70%

日本酒度

±0

酸度

1.8

ZKでは、利酒師 毛馬がセレクトする“特選 日本酒飲み比べ 三種セット”(各60ml 2,200円)も
週替りでご用意しております。

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