煌めきの連鎖

志摩時間 2025年夏号より
 

1980年代にアメリカから始まったクラフトビールブーム。小規模のブルワリーが醸すクラフトビールは味や香りなど、作り手の個性が表れます。

クラフトビールの種類は主に2つに分類され、18世紀に世界中に広まった約5℃で長期間発酵させる「ラガービール」と、5世紀にはイギリスで醸造されていた約20℃で短期間発酵させる「エールビール」があります。

その中には150以上のスタイルがあるのも特徴で、ラガービールでは日本での流通量の約99%を占め、のど越しが良い「ピルスナー」、エールビールではモルトのコクやホップがふくよかに香る「ペールエール」、ホップを大量に使う「IPA」、黒ビールの一種である「スタウト」などが有名です。


日本では1994年、酒造法改正により年間の最低製造数量が2千キロリットル以上から60キロリットル以上に引き下げられたことで、全国で地ビールブームが起こりました。しかし技術力の不足や味わいの不安定さなどにより衰退。

その後、2012年頃に世界的なクラフトビールブームが日本にも到来し、本物志向のメーカーを中心に現在では国内に800以上の醸造所(ブルワリー)があります。
伊勢志摩にはクラフトビールのブルワリーが3社あり、それぞれに地域の魅力をビールで表現、発信しています。
樋口総料理長、塚原和食総料理長と各醸造所を訪ね、クラフトビールの魅力と特徴、そしてビール造りに情熱を注ぐ醸造家の想いを伺いました。
 

中西さん(中左)、藤原さん(中右)と話すお二人

志摩市にある近鉄鵜方駅の駅舎1階に2025年3月、近鉄リテーリングがオープンした「志摩醸造」。
ガラス越しに醸造の様子が見られ、隣接するタップルームでは出来たてのクラフトビールを飲むことができることから観光客や地元の方々で賑わっています。

運営をするのは同社のクラフトビール事業責任者の藤原慶史(ふじわら よしふみ)さんと、クラフトビールの醸造歴28年の三重県出身、中西正和(なかにし まさかず)さん。

志摩醸造では現在3種のクラフトビールを製造しており、それぞれの特徴やこだわりを藤原さんに伺いました。
 

「〝GOLDEN ALE〟は最初の1杯目にお飲みいただくイメージ。ホップの爽やかな香りと穏やかな苦味ですっきりとした味わいです。

〝COLD IPA〟は志摩醸造のフラッグシップビールとして位置づけており、IPAらしい強いホップの香りと苦味があります。
このビールの特徴は志摩産のコシヒカリを使っていることで米のやわらかな甘味が感じられます。米の仕入れは農家さんに直談判。米飯で使えない小米も使い廃棄ロスにもつなげています。

〝PALE LAGER〟は柑橘の香りがするホップを使ったペールカラーの麦汁をラガー酵母で発酵させることですっきりとしたのど越し。英虞湾の美しい夕陽をイメージしたオレンジ色に仕上げています」。

ベテラン醸造家の中西さんのこだわりを伺うと「仕込むビールによって水のPH値(水素イオン指数)も調整しています。例えば焙煎度合いが高い香ばしい麦芽は発酵するとビールの㏗が下がって酸味が出るので、予め㏗が高い水で仕込むんです」

試飲する樋口総料理長(左)、塚原和食総料理長(右)

樋口総料理長は「COLD IPAは水の㏗を合わせることで、米の甘味やホップの香りを引き立たせているのですね。熟練の技を感じます」。

中西さんは「今回の3種は缶でも生ビールとしても販売予定です。また今後は伊勢志摩や三重県の素材を使った季節限定のビールも造りたいですね。
今回、地元の三重県で醸造に携わることができましたので、これからはクラフトビールを通して地域に貢献していきたいと思います」。

 

佐々木さん(中左)、藪木さん(中右)と話すお二人

地元出身の同級生である藪木啓太(やぶき けいた)さんと佐々木基岐(ささき もとき)さん。それぞれが県内外のブルワリーで学んだ後、2022年に伊勢市二見町で開業したのが「ひみつビール」です。

農家でもあり自ら原材料を育てるファームハウスブルワリーとして、藪木さんの祖父母が農業で使っていた納屋を改装し、地域の素材などをテーマに年間60種類以上のクラフトビールを生産。

自家製米や、幼い頃給食で親しんだという大内山牛乳を使う作品もビール愛好家に好評なのだとか。今は伊勢海老のクラフトビールを考案中とのこと。
 

佐々木さんは「季節感、その時だけの素材の味を引き出すビール造りを行っています」。

最近では伊勢市の指定天然記念物である〝蓮台寺柿〟や鳥羽市の木〝ヤマトタチバナ〟といった地域を盛り上げるビール造りにも取り組んでいるそうです。

「例えば同じ柑橘でも秋の青いものは皮のフレッシュな香りを、完熟の時期はマイルドな味を際立たせます。一般的に工場で大量生産するビールは安定した味わいを目指し技術を駆使します。対して私たちはワインに近い感覚で、その年や時期の違いを大切に造っています」と藪木さんは話してくれました。
 

八朔や夏みかんなどで造ったビールを試飲する塚原和食総料理長は「フルーティーで苦味が少なく飲みやすいですね。味のバランスが良く和食にも合いそうです」。

樋口総料理長は「レモンとライムのビールは、爽やかな香りが広がります。季節によって素材の魅力を引き出し、風土の味を大事する考え方は料理につながる部分もありますね。同じ味覚や素材の構成でビールに合う料理のイメージを広げる。というのも楽しそうです」。


最後に藪木さんは「地元で製造することにしたのは、クラフトビールを通じて地域内外の人が繋がったり、ビールを共通の話題とした人の居場所づくりをしたいから。ひみつビールに合うどんな料理を考えてくれるのか、また教えてくださいね」と。わくわくする気持ちで皆さんを繋げたようです。

東海地方で最大級、最新鋭の設備を持つ伊勢市の伊勢角屋麦酒(以下ISEKADO)は、450年以上続く老舗餅店「二軒茶屋餅角屋本店」21代目当主の鈴木成宗(すずき なりひろ)さんが1997年に事業を開始。

代表作である〝ペールエール〟はビール界のオスカーとも称される世界的ビールコンペティション「The International Brewing Awards」で日本企業では初となる3大会で金賞を受賞。業界内でも高く評価されています。

しかし、華々しい功績の道のりには29歳で事業を始めた鈴木さんの苦労があったそうです。
「お金も設備も時間もなく、事業も全く軌道に乗らない。実はそんなときに出会ったのが志摩観光ホテルの第5代高橋総料理長でした。食事にお招きいただき『ビールも料理も要素を分解して再構築すること』と教えてもらいました」。

今では海外11の国と地域に出荷し年間500万本以上を販売する鈴木さん。その原動力を尋ねると「子どものころから微生物に興味があり顕微鏡を覗くのが大好きでした。大学でも農学部で酵母を学びました。
 

その後家業に戻り、家族経営で昔ながらの餅を作る単調な日々が続いていたとき、1994年の酒造法改正でビールが造れることを知り『また酵母と遊べる!』と嬉しくなりました。
そして神宮がある伊勢という地でビールを造るからには、世界に通用するものづくりをしようと決めました」。



そんなISEKADOの特徴のひとつはビール醸造の際、麦芽を糖と炭酸に分解する酵母に自然界の様々な「野生酵母」を使っているところ。

世界で唯一無二の地元の野生酵母「KADOYA1」で醸す〝ヒメホワイト〟も、ISEKADOを代表する銘柄のひとつです。

鈴木さんは「ヒメホワイトは野生酵母のナチュラルな酸味と控えめな苦味、小麦麦芽を合わせた優しく軽やかな口当たりで和食や寿司にも合います」。
 

ビールができる工程を見学する樋口総料理長

樋口総料理長は「クラフトビールは造り手の想いが味に素直に表れるのですね。私たちも伊勢志摩らしさが伝わる想像力豊かな料理で、醸造家の皆さんとともに地元の魅力をお伝えしていきます」。

八朔や夏みかん、ハーブなどを使った爽やかな柑橘系のクラフトビールに合わせる料理は、大型鍋で蒸したムール貝とフレンチフライをマヨネーズにつけて食すベルギーの郷土料理〝ムール・フリット〟をイメージ。夏が旬の車海老を使ったアレンジです。

車海老の身は大葉に包み、米粉の皮と小麦の皮の2種類で揚げます。揚がり具合が軽やかな米粉生地、対して小麦粉はザクッとした食感。揚げることで甘味が増した車海老は、レモンの果皮を加えた真珠塩やレモンマヨネーズからお好みでお召し上がりください。

華やかに調和する柑橘の香り、パリパリの食感はクラフトビールの爽快なのど越しにぴったりです。

カリッと揚げた車海老の頭、ホクホクのジャガイモ、ハーブの素揚げなど、ビールを愉しむひと時をイメージしました。ひみつビールで感じた醸造家の遊び心、わくわく感を軽やかに表現した料理です。

フラッグシップビールである〝COLD IPA〟を中心に、志摩醸造のクラフトビールの味わいを引き立てる煮込み料理です。

松阪豚の肩ロースは塩胡椒で表面をソテーし、旨味を閉じ込めます。飴色になるまで炒めた玉ねぎ、トマト、チキンブイヨンにソテーした松阪豚を加えてCOLD IPAでじっくり煮込みます。

肉を取り出したらソースを煮詰め、ビールの程良い風味を残し仕上げます。IPAならではのホップの心地良い苦味に、旨味が強い松阪豚の解ける食感や脂身のコクなど複雑且つしっかりとした味わいを個性的な志摩醸造のクラフトビールが受けとめます。

またリゾットにはCOLD IPAで使う志摩産の米ともち麦を使い、バター、チキンブイヨン、チーズでシンプルに仕上げました。リゾットとCOLD IPAの米のやわらかな甘味が調和し、ふくよかな香りの余韻が広がるひと品です。

ISEKADOを代表するホップの爽やかさと軽やかな苦味が特徴のペールエール。野生酵母、柚子の果皮、小麦麦芽を使い、華やかな香りと軽やかな口あたりで和のテイストと相性の良いヒメホワイトにも合わせました。

野性味のあるカツオはマリネで味を凝縮し、しっとりとした食感に。炭火で炙ることで香ばしく仕上がり、ペールエールの深みのある味わいにも寄り添います。

カツオに添える玉ねぎはシャキシャキとした食感を残しつつ、甘味を引き出す火入れでオリーブオイルに柚子の果皮や果汁を加えたドレッシングを合わせます。

カツオ、玉ねぎ、柚子といった和を感じる組み合わせでヒメホワイトの繊細な味わいにも調和させました。

ひとつの料理でふたつのクラフトビールが愉しめる、個性豊かなペアリングをご賞味ください。

5月25日(日)ランチイベント 「BIÈRE & BLEU(ビエール エ ブルー)」にてご提供する予定です。
※入荷状況により提供期間が変わる場合があります。
フレンチレストラン「ラ・メール」 ザ ベイスイート5F
ディナー 17:30-21:00(L.O.19:30)

贅沢な味わいが魅力の松阪牛のハンバーガーは、ロースやヒレなどの部位を手切りすることで松阪牛が持つ芳醇な香りや旨味を愉しめ、ガーリックマヨネーズのソースが素材本来の味を引き立たせます。

毎朝焼き上げるクロワッサンで包んだ松阪牛のローストビーフは、三重名物のトンテキ風ソースを合わせて。

ガパオライスは旨味が濃厚な松阪豚のミンチに濃口醤油、酒、みりんにオイスターソースを加えた和風テイストに仕上げました。

夏はテラスでお好みのクラフトビールとご一緒に。心地良い午後のひと時をお過ごしください。

カフェ&ワインバー「リアン」 ・レギュラーメニュー松阪牛のハンバーガー
・松阪牛ローストビーフ クロワッサンサンド
・松阪豚のガパオライス

 
伊勢志摩の地は、ゆるやかな時間の流れに合わせて、表情を少しずつ変えながら、四季折々の味覚や色彩を私たちに届けてくれます。
そんな季節の移ろいとともに、志摩観光ホテル季刊誌「志摩時間」では、地元の文化や豊かな自然などを通じて、伊勢志摩の四季をご紹介しています。

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