北勢〈vol.2〉萬古不易の精神

感性を育て、新しい表現へ。

2019年夏号より

約300年前に誕生した萬古焼は現在、北勢に100社以上の窯元が存在し、四日市萬古焼は国から伝統工芸品の指定を受けています。今回は三重ブランドにも認定されている萬古焼の窯元、醉月窯(すいげつ)を訪ねました。

三代目醉月さん

窯元では三代目醉月さんと二人の息子である潤さん(兄)と潮さん(弟)が作陶中。萬古焼といえば土鍋や急須が有名。「使いやすさと美しさのバランスが調和しているのが萬古焼の急須。持ち手の位置も上の方が見た目はいいのですが、持ちやすさを考えてできるだけ下に付けています」と潤さん。萬古焼に使われる土は、かつて四日市で豊富に採れた紫泥土。天日で乾燥させた後、釉薬を使わずに窯で焼き上げる萬古焼の美しさは限界まで引き出されたキメ細やかな土の紫色の光沢が特徴です。

潤さん

窯元では三代目醉月さんと二人の息子である潤さん(兄)と潮さん(弟)が作陶中。萬古焼といえば土鍋や急須が有名。「使いやすさと美しさのバランスが調和しているのが萬古焼の急須。持ち手の位置も上の方が見た目はいいのですが、持ちやすさを考えてできるだけ下に付けています」と潤さん。萬古焼に使われる土は、かつて四日市で豊富に採れた紫泥土。天日で乾燥させた後、釉薬を使わずに窯で焼き上げる萬古焼の美しさは限界まで引き出されたキメ細やかな土の紫色の光沢が特徴です。

塚原料理長と話しをする潮さん(右)

「土を使った伝統的な生活品でありながら美しい造形のフォルムも魅力です。萬古焼は土もみ3年、ろくろ10年と言われますが、和食の世界はどうですか?」と潮さんが塚原料理長に問いかけると「私達にも飯炊き3年、味付け10年という言葉があります。似ていますね」。傍らでうなずく醉月さんは「まずろくろで土もみを行い土のくせを取ってから、自分の想いを作品に込めて創ります。土もみは地味ですがとても重要な工程です」と語ってくれました。日常に寄り添う急須はもちろん、3名それぞれが個性を打ち出した新たな作品も創作しています。

右から:きし代さん・潮さん・三代目醉月さん

醉月さんの陶器に奥様で絵師でもあるきし代さんが「盛絵」の技法で絵付けを加えた作品は華やかで人気があります。実は今から約30年前、萬古焼絵付けの技法が失われかけたそうで「あなたが絵付けを継がないで誰がやるのと言われて筆を取りました。この技術をこれから多くの人に伝えるのも私の仕事」と、自身の作品作りに加え絵付け教室も開催するきし代さん。醉月さんが作り、きし代さんが絵付けをした盃はG7伊勢志摩サミット、ワーキングディナーの祝杯でも使用されるなど萬古焼を世界へ広めました。ギャラリーに移動し醉月窯の茶器で、きし代さんが煎れた水沢のお茶を一服。皆に笑顔がこぼれます。「紫泥は鉄分等を含み、お茶の渋みを吸収してまろやかな味になります。お茶の産地である水沢とは昔から切っても切れない関係なんですよ」と潮さん。

多彩な作品を長年作り続ける醉月さんに創作の源である『感性』について尋ねました。「感性って作れるんです。たくさんの場所に出向き多くのものを見ることで感性は磨いて、育てることができます。それはすぐには陶器に表現できないのですが、経験の積み重ねは自分だけの感性になります」。樋口総料理長は「美しい物を見たり多くの方とお話しをする。そしていろんな食材をいただくことでたくさんの発見や学びがあります。私の場合は料理ですが、何もないところに新しい形を創るのは陶芸と似ていますね。おっしゃるとおり、感じたことを自分のものとしてすぐには表現できません。でも、ある瞬間に今までの引き出しから答えが見つかる感覚はあります」。

最後に潮さんが大切なことを話してくれました。「陶芸って普通は地名が付くでしょ。でも萬古焼はそうではなく萬古不易という言葉が名前の由来。萬古不易の意味は、『永遠に変わらないこと』なんです」
醉月窯でプロフェッショナルの人々が語る言葉に『伝統を守りながら新しいことに挑戦し続ける』という永遠に変わらない精神を感じました。

総料理長 樋口 宏江

1991年志摩観光ホテルに入社。2008年ベイスイート開業とともにフレンチレストラン「ラ・メール」のシェフとなる。2014年に志摩観光ホテル総料理長に就任、2016年伊勢志摩サミットでワーキングディナーを担当。2017年に農林水産省料理人顕彰制度、料理マスターズブロンズ賞に女性初、三重県初の受賞。

和食料理長 塚原 巨司

1986年博多都ホテル入社。和食「四季亭」、1987年都ホテル大阪(現シェラトン都ホテル大阪)日本料理「都」、「うえまち」で研鑽を積み、2015年、志摩観光ホテル和食「浜木綿」料理長に就任。2016年伊勢志摩サミットにて和食料理の提供に携わる。

取材日

2019年3月

旅の想い出

茶畑が広がる水沢にあるかぶせ茶カフェ。趣のある古民家でお茶をいただけます。またあられ茶漬けや茶殻も食べることができ、7月から9月はお茶を凍らせたかき氷も販売。

取材協力

〒512-1105 三重県四日市市水沢町998
ホームページ http://www.marushige-cha.jp

取材日

2019年3月